「ただちに建設にかかれ。しかし、その道は、死に勝る苦しみと覚悟せよ」
終戦2日目、焼け残った銀座の本社会議室に集めた社員に向かい、こう訓示したところから、店主(社長)国岡鐵造(くにおか・てつぞう)および国岡商店の戦後復興への挑戦は始まる。
還暦60歳。なすすべなく会社を清算し、自らの社会人人生の幕を下ろしても不思議ではない環境であり年齢だ。しかし、この男の企業人人生最大の山場は、まさにここから始まる。
出光(いでみつ)興産創業者・出光佐三の生涯を濃密に描き切ったノンフィクション・ノベルです。登場人物、企業名は架空のものに置き換えられているが、おおよその事柄ははすべて事実に基づくようだ。
利権を握る業界団体との戦い。石油メジャー「セブン・シスターズ(七人の魔女)」の包囲網。自社のためのみならず、日本の自主独立のため巨象に立ち向かい、国際ニュースともなった「日章丸事件」では英国海軍をかいくぐり、イランからの石油輸入を実現する-。
局面局面でのギリギリの攻防。一歩間違えば倒産というシーンがこれでもかと国岡商店を襲う。そこで店主、国岡鐵造はどう情報収集し、いかに経営判断を下すかというところが読みどころ。