太平洋戦争があった。
敗色濃くなると特攻隊が組織された。
特攻隊員たちは神様として見送られた。
ところが目的を果たせず引き返してきた特攻隊員がいた。
その理由は様々であるが、生きて帰る事は想定されていなかった。
帰ることを許されない存在であった。
帰ってきた特攻隊員のその後を丹念に取材した力作といっていいだろう。
特攻隊は陸軍、海軍とも別々にあった。
しかし著者林えいだい氏は海軍の事情については調べることができなかったようだ。
陸軍にしても公式な資料は無いため、生存者からの聞き取り調査なのだ。
戦後60年も経過してしまって聞きたい人は鬼籍に入ってしまっている。
関係者をやっと探し当てても、帰ってきた“軍神”達は口を閉ざして答えない。
苦労して集めた証言は大変貴重な資料である。
そしてその証言は大変人間くさい体験談であり当時の空気がよく分かる。
私にも当時の日本人と同じ血が流れている。
当時の異常な出来事に、分る部分もある。
会社人間として猛烈な仕事っぷりを要求された時代があった。
軍隊式の教育方法が賛美され、『会社の為』が要求され『会社の為』にならないことは切り捨てられた。
特攻隊思想が甦ったような時期があった。
しかしそのようなやり方にほころびが出てくると消えていった。
いまだに日本人は日本人としてどう生きるべきなのかと言う問題を解き明かせていないのではないだろうか。
大変深く考えさせてくれる著作である。
沢山の『日本人』に読んでもらいたい